「ヨーグルトを毎日食べているけれど、ビフィズス菌は何に効いているのだろう」「乳酸菌と書いてあるものと、どちらを選べばいいのだろう」。売り場で手が止まった経験のある方は多いはずです。
ビフィズス菌は大腸にすみ、酢酸と乳酸を作って腸の中を酸性に保つ菌です。悪玉菌が増えにくい環境を作ることで、腸内環境を整える働きが期待できます。乳酸菌との違いは「住む場所」と「作る酸」にあり、1つの表で見比べられます。
「生きて腸まで届くのか」という心配にも答えがあります。エサになる食物繊維と一緒にとれば、腸にいるビフィズス菌が働いてくれるからです。
ビフィズス菌は大腸で酸を作り腸内環境を整える菌
ビフィズス菌の働きをひと言でいえば、大腸で酢酸と乳酸を作り、腸の中を悪玉菌が増えにくい酸性に保つことです。この酸は腸の表面の細胞を守る方向にも働くことがわかってきました。赤ちゃんの腸にいちばん多く、大人になると1割を切るところまで減ります。
酢酸と乳酸で腸の中を酸性に保つ
ビフィズス菌はブドウ糖などの糖から、酢酸と乳酸の2つの酸を作ります。酸が増えると大腸の中は酸性に傾き、たんぱく質を腐らせて有害な物質を作る菌が増えにくくなります。腸内細菌は善玉菌・悪玉菌・日和見菌(ひよりみきん)に分けて呼ばれますが、ビフィズス菌はこの善玉菌の代表です。
ビフィズス菌の効果の中心は、菌そのものより、菌が作る酸にあります。だから「生きた菌が届くか」と同じくらい、「腸にいるビフィズス菌が酸を作れているか」が大切になります。
酢酸が腸の表面の細胞を守る
ビフィズス菌の作る酢酸は、腸の表面を覆う細胞に働きかけます。酢酸を多く作るビフィズス菌をすまわせたマウスは、O157という食中毒菌を与えても腸の細胞が持ちこたえ、酢酸の少ない菌ではそうならなかったことが2011年の実験で示されています。
ヒトで同じ結果が出ると言い切れる段階ではありませんが、腸の表面を守る酸を大腸で作り続ける菌だと考えると、毎日補う意味がつかみやすくなります。
赤ちゃんの腸にいちばん多い
ビフィズス菌は生まれて数日のうちに腸で増え始め、母乳や粉ミルクで育つ時期の腸内細菌の主役になります。離乳を境に割合は大きく下がり、日本人の大人(21〜69歳)では腸内細菌全体の中央値で7%ほどです。
7%と聞くと少なく感じますが、海外の人と比べると日本人は多いほうに入ります。それでも年齢とともにさらに減っていきます。
乳酸菌との違いは住む場所と作る酸
ビフィズス菌と乳酸菌は、分類のうえでは別の細菌です。乳酸菌は小腸を中心に腸の上のほうでも生きられ、作るのはおもに乳酸。ビフィズス菌は酸素が苦手で大腸にすみ、乳酸に加えて酢酸を作ります。6項目の表で見比べると、どちらを選ぶかが決めやすくなります。
違いは6項目の表で見比べる
| 項目 | ビフィズス菌 | 乳酸菌 |
|---|---|---|
| おもにすむ場所 | 大腸 | 小腸など、腸の上のほうにも多い |
| 作る酸 | 酢酸と乳酸 | おもに乳酸 |
| 酸素 | 苦手で、酸素があると増えられない | 酸素があっても増えられる |
| 分類 | ビフィドバクテリウム属。形はY字 | 糖から乳酸を半分以上作る菌の総称 |
| 多い食品 | ビフィズス菌を加えたヨーグルトや乳酸菌飲料 | ヨーグルト、チーズ、みそ、漬物など発酵食品全般 |
| 向く人 | 大腸の環境を意識したい、年齢とともに減る菌を補いたい | 発酵食品の幅を広げながら、腸全体をケアしたい |
腸の「奥(大腸)」を意識するならビフィズス菌、腸の「上のほう」から発酵食品で幅広く補うなら乳酸菌、と覚えておくと選びやすくなります。どちらが優れているという話ではなく、住む場所が違う2種類の菌です。
乳酸菌は小腸、ビフィズス菌は大腸に多い
乳酸菌は酸素があっても生きられるため、胃に近い上のほうの消化管でも増えられます。小腸で乳酸を作って腸内を酸性にし、悪玉菌の増殖を抑えます。みそや漬物、チーズなど多くの発酵食品に使われているのも、酸素に強いからです。
ビフィズス菌は酸素があると増えられないので、すみかは酸素の届きにくい大腸です。ヨーグルトに入っているビフィズス菌は、メーカーが選んで加えたものです。乳酸菌そのものの働きは乳酸菌の効果と種類ごとの違いで詳しく書いています。
どちらを選ぶか迷ったら
迷ったら、まずパッケージの菌の名前を見てください。「ビフィズス菌」や「Bifidobacterium」と書かれていれば大腸向け、「乳酸菌」だけなら小腸中心と考えて差し支えありません。
大腸には、酪酸を作る酪酸菌というもう1つの仲間もいます。ビフィズス菌と同じ大腸ですみ分ける菌で、働きの違いは酪酸菌とは何かにまとめました。
ビフィズス菌は年齢とともに減り食事から摂りにくい
ビフィズス菌は離乳のあとと、中高年を過ぎる頃の2段階で減ります。しかも酸素に弱いため、ふだんの発酵食品からはほとんど補えません。摂るなら、ビフィズス菌を加えたヨーグルトか、エサを増やして腸にいる菌を育てる方法になります。
離乳のあとと中高年の2段階で減る
0歳から104歳までの日本人367人の腸内細菌を調べると、ビフィズス菌を含むグループの割合は離乳のあとに大きく下がり、その後も年齢とともに減り続けていました。70歳を過ぎると、代わりに別のグループの菌が増えていきます。
中高年を過ぎる頃からは、ビフィズス菌が減る一方で、たんぱく質を腐らせてアンモニアなどの有害物質を作るウエルシュ菌が増えやすくなります。「若い頃よりお腹の調子が変わった」と感じる背景のひとつです。
減り方には個人差が大きく、食べているものの影響も受けます。年齢を重ねるほど、「補う」と「減らさない」の両方が大切になります。
ビフィズス菌がいる食品はヨーグルトなどに限られる
ビフィズス菌を食品から摂るなら、選択肢はビフィズス菌を加えたヨーグルトや乳酸菌飲料にほぼ絞られます。日本ではヨーグルトなどの発酵乳は、1mlあたり1,000万以上の乳酸菌または酵母を含むことが規格で決まっています。
ただし、この数は乳酸菌または酵母の合計で、ビフィズス菌がどれだけ入っているかは製品ごとに違います。買うときは「ビフィズス菌入り」の表示と、菌の株(かぶ)の名前を確かめるのが近道です。
<p class=”hm-term”><b>用語メモ|発酵乳</b>乳を乳酸菌や酵母で発酵させた食品の法律上の呼び名です。ヨーグルトはこの発酵乳にあたり、無脂乳固形分8.0%以上という規格も定められています。</p>
生きて届かなくても腸にいるビフィズス菌のエサは届く
「胃酸で死んでしまうなら意味がないのでは」という心配はもっともです。菌が生きて届くに越したことはありませんが、届かなくても、腸にすでにいるビフィズス菌のエサ(食物繊維とオリゴ糖)は大腸まで届いて菌を増やします。菌とエサを一緒にとるのが、いちばん確実な摂り方です。
ヨーグルトは菌の名前が書いてあるものを選ぶ
ヨーグルトは、まず「ビフィズス菌」と菌の名前が書いてある製品を選びます。同じビフィズス菌でも株によって性質が違うため、名前の明記はメーカーがその株で品質を管理している目印です。食べる時間は、続けやすさで決めて構いません。朝か夜か、食前か食後かで迷う方はヨーグルトはいつ食べるのがいいかに目安をまとめています。
食物繊維とオリゴ糖を一緒にとる
食物繊維は小腸で消化されず、そのまま大腸まで届いて腸内細菌のエサになります。ビフィズス菌などの善玉菌が食物繊維を使うと酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸ができ、大腸の中が酸性に保たれて悪玉菌が増えにくくなります。エサを届けることが、そのままビフィズス菌に酸を作らせることになります。
日本人の大人の食物繊維は1日平均18.1gで、目標は男性20g以上、女性18g以上です。足りない分は、まず1日プラス3〜4gを目安にするとよいとされています。押し麦、さつまいも、納豆、ごぼう、ブロッコリー、ひじき、りんごなら、1食分(納豆1パック、りんご1個ほど)で2〜3gを補えます。
オリゴ糖も同じくビフィズス菌のエサになります。玉ねぎやごぼう、バナナ、大豆に含まれ、どの食材に多いかはプレバイオティクス食品の一覧で種類別に確かめられます。
腸にいい食材の組み合わせは腸内環境を整える食べ物12選に献立例つきでまとめています。
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毎日続けるコツは朝のヨーグルトにひと工夫
続ける工夫は、新しい習慣を増やすより、すでにあるヨーグルトの習慣にエサを足すことです。朝の一杯にバナナやきな粉を足し、主食を麦ごはんに変えるだけで、菌とエサが同じ食卓にそろいます。
今日からできる3つ
- 朝のヨーグルトに、バナナやきな粉、オートミールを足す
- 1日1食の主食を麦ごはんか胚芽米にする
- 間食をみかんやバナナなどの果物に置き換える
どれも特別なことではありません。
数週間続けて体感で判断する
腸内細菌の顔ぶれは、すぐには入れ替わりません。同じヨーグルトと同じエサの組み合わせを数週間続け、お通じのリズムやお腹の張りの変化で判断してください。合わないと感じたら、菌の株やエサの種類を変えてみるのが次の一手です。
ヨーグルトが苦手な方は、サプリメントで補う方法もあります。菌株と配合量の見方はビフィズス菌サプリの選び方で比べられます。
菌とエサを1つで済ませたいときの選択肢
ヨーグルトは毎朝食べているのに、ごぼうや押し麦のようなエサの食材までは毎日続かない。そんな方は少なくありません。補ったビフィズス菌が腸にそのまま住み続けるとは限らないので、エサが途切れると酸を作る力も続きにくくなります。菌とエサを別々に揃えるより、一緒にとれる形にしておくほうが習慣は切れにくいものです。
「菌もエサも、1つで済ませたい」という方の選択肢のひとつがTHE MENEKIです。ビフィズス菌BB536と酪酸菌に、エサになるイヌリンとフラクトオリゴ糖を1粒にまとめた一般食品で、歯磨きのあと夜に2粒舐めるだけです。体質との相性には個人差があります。
まとめ
ビフィズス菌は大腸で酢酸と乳酸を作り、腸の中を悪玉菌が増えにくい酸性に保つ菌です。乳酸菌とは住む場所と作る酸が違い、酸素に弱く年齢とともに減るぶん、ヨーグルトとエサの両方で支える必要があります。
まずは今日、冷蔵庫のヨーグルトの菌の名前を確かめるところから。次の買い物で「ビフィズス菌入り」を選び、朝の一杯にバナナを添える。それだけで、菌とエサがそろった腸活が始まります。
参考文献
- 理化学研究所「ビフィズス菌の作る酢酸がO157感染を抑止することを発見」(2011)
- Odamaki T, et al. “Age-related changes in gut microbiota composition from newborn to centenarian: a cross-sectional study” BMC Microbiology (2016)
- 立垣愛郎「乳酸菌の健康機能」Comprehensive Medicine 17巻1号 (2018)
- 馬場重樹ほか「腸内細菌叢とdysbiosis」日本静脈経腸栄養学会雑誌 33巻5号 (2018)
- 厚生労働省「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」

